私が不動産業界にいたころ、よくお客さまから質問を受けていたことがあります。
それは、「掘り出し物件はありますか?」というご質問です。

家賃が安い賃貸物件を探すだけなら、不動産検索サイトで、地域や間取りを指定した後、「家賃が安い順」に並び替えればすぐにでてきます。
しかし、お客さまがいう「掘り出し物件」というのは「コスパの高い物件」という意味なのです。
営業マンとして、「ないです」とはいえませんので、それっぽい物件を紹介することはありましたが、実際のところ「掘り出し物件は(滅多に)ない」のです。
なぜなら、家賃は(ほぼ)市場が決める面があり、高い家賃でも入居者が決まる物件もあれば、安い家賃でないと入居者が決まらない物件もあり、ビジネスとして不動産経営をする、すべての家主さんに共通していえるのは、「できることなら少しでも高く貸したい」ということです。
しかし、家主さんも人間ですので、どう考えても間違いではないかという家賃設定をすることもあったりで、掘り出し物件はないとはいいきれませが、通常は「掘り出し物件はない」と考えてもよいくらいです。
ですので、激安物件には、家賃を安くしないといけない理由が必ずあると考えるべきです。
逆をいえば、家賃を安くしないといけない理由が、自分の許容できる理由であれば、ある意味その人にとっての「掘り出し物件」なのではないかと思います。
激安物件への入居を検討する際に注意すべきことは何か?
まず、「激安物件はなぜ安いのか?」 理由を知る必要があります。
一般的に家賃が安い(つまり家賃を安くしないと入居者が決まらない)物件は、「古い物件」「立地が悪い物件」「狭い物件」「クセのある物件」「事故物件」となります。
- 古い物件
- 立地が悪い物件
- 狭い物件
- クセのある物件
- 事故物件
これらの特徴がある物件は、安くなりやすい傾向にあります。
特徴ごとにみていきましょう。
古い物件
古い物件は、物件自体が古いものを指します。
物件自体が古いということは、耐震強度が以前の弱い基準で建てられた可能性があったり、建築時のライフスタイル、当時の家具家電の大きさに合うように設計されていたりしますので、現在のそれとは違いがあり、使いにくい間取りとなっていることも多いです。
反面、建物自体は古いものの、現代風にリノベーションされている場合もありますので、そのような物件は、住む人によっては掘り出し物件になり得ます。
- 築年数が古い木造アパートなどは、耐震強度に不安がある(昭和56年以前の建物は注意)
- 築年数が古い物件は、建替による退去を通知される場合がある
- 設備故障時に部品がなく、修理までに何週間も待たないといけない可能性がある
立地が悪い物件
立地が悪い物件の例としては、崖崩れや水害など災害の起こりやすい地域、ゴミ焼却場、火葬場、墓地、悪臭・騒音などを発生させる工場などの嫌悪施設の近く、また、近隣に商業施設等がない不便な地域などが該当します。
不便な地域でも、職場に近い場合や、マイカーでの移動が苦にならない人にとっては、選択肢に入れてもよいでしょう。
- 津波、土砂災害など災害の警戒区域に指定されている場合がある
- ハザードマップ上で水害などのリスクが高い地域として指定されている場合がある
- 嫌悪施設が近隣にある場合がある
- 商業施設が少なく、生活に不便な場合がある
狭い物件
狭い物件は、狭いから家賃が安いのであって、割安な家賃設定とは限りません。
物件によっては、洗濯機置場や冷蔵庫などが置けない場合もあります。
物件資料に載っている間取り図だけではイメージがわきにくいので、実際に内見した方が無難です。
- 持ち込みの家具・家電が設置できない場合がある
クセのある物件
クセのある物件とは、間取りがや内装などが入居者を選ぶ物件のことです。
例えば、部屋の形が台形の形をしている、天井が低い部分がある、段差が多い、クロスの色や柄が個性的すぎる、といった物件です。
はまる人にははまることもありますが、はまる人がいないと長期で空いてしまうこともあり、それにより家賃が下がることもあります。
- 持ち込みの家具・家電の設置ができない場合がある
- 持ち込み予定の家具・家電の配置に工夫が必要な場合がある
- 生活動線が悪い場合がある
事故物件
事故物件は、「心理的瑕疵」、「物理的瑕疵」、「法的瑕疵」、「環境的瑕疵」がありますが、なぜか相場と比べて2~3割ほど安い家賃で入居者募集をしている賃貸物件は「心理的瑕疵」の場合が多いです。
「心理的瑕疵」というのは、自殺や殺人などで過去に死亡事故が発生している物件のことです。
事故物件の場合、不動産屋さんは契約までに、「告知事項あり」としてその内容を借主に告知する義務があります。
国土交通省が令和3年10月8日に策定した「人の死の告知に関するガイドライン」によると、事故物件の告知事項は、賃貸物件の場合は3年間といわれています。
また、「人の死の告知に関するガイドライン」では、不動産屋さんが家主さんにヒアリングをして、家主さんが過去に「告知事項に該当することはない」といえば、不動産屋さんはそれを信用するしかない、ということ、また、自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故・誤嚥など)は原則、告げなくてよい、とされていますが、規定されていること以外の部分は、不動産屋さんの現場判断になることが多いです。
- 告知事項に該当しない事故物件がある(過去の事故など)
激安物件の入居を検討したときに確認すべき契約上の注意点
激安物件に入居を検討したときに注意すべきことは、物件が持つ「弱点」だけではありません。
家賃が安くても、その他注意すべき点があります。
- 一定期間だけ家賃が安くなる契約ではないか
- 初期費用や退去時費用が相場より高額ではないか
- ガス会社のガス料金の設定が相場より高額ではないか
- 最低限の付帯設備は付いているか
一定期間だけ家賃が安くなる契約ではないか
1年間や2年間だけといった、一定期間のみ家賃が安くなる契約があります。
不動産検索サイトには、契約時の賃料が表記されますので、家賃が安い順に並び替えをすると上位に表示されお部屋探しをする人の目につきやすくなります。
しかし、一定の期間が経過したあとは、さほど安くない家賃になってしまうこともあります。
また、そのような物件は、「短期解約違約金」という違約金が設定されている場合があります。
「短期解約違約金」とは、一定期間より短い期間で退去した場合にかかる違約金のことで、設定されている場合、家賃1ヶ月分や2ヶ月分がかかる場合もありますので注意しましょう。
初期費用や退去時費用、更新料が相場より高額ではないか
月額の家賃は安い設定にされていても、初期費用や退去時費用が相場と比べて高額な場合があります。
月々の家賃を安くして、初期費用や退去費用、更新料に上乗せした方が、不動産検索サイトで目に付きやすいというカラクリです。
激安物件にありがちな、「和室」がある物件の場合、契約内容によりますが、退去時に高額な畳の表替えの費用を請求される場合もあり、注意が必要です。
ガス会社のガス料金の設定が相場より高額ではないか
家賃や初期費用、退去費用、更新料が安くても、物件で指定されているガス会社のガス代が相場より高い場合もあります。
物件によっては、家賃が1万円台なのに、ガスの使い方次第ではガス代が月々1万円以上かかることもあります。
物件のガスの仕様が、都市ガスであれば安心ですが、プロパンガスの場合要注意です。
物件で指定されているガス会社は、不動産屋さんに確認しましょう。
不動産屋さんの担当者次第ではありますが、ガス単価が高いか安いか教えてくれる場合もあります。
最低限の付帯設備は付いているか
家賃が安くても、エアコンや居室の照明などの付帯設備が付いていない物件も多いです。
エアコンや居室の照明は、入居後使うものになりますので、なければ自分で購入し、取り付けをしなければなりません。
また、入居後自分で取り付けたものは、退去時に取り外さないといけませんので、それぞれ購入費用・取り付け費用・撤去費用がかかることになります。
「家賃が安いと思って入居したのに、設備費用にお金がかかってしまった」ということもあり得ますので、付帯設備として何が付いているのかも確認しましょう。
まとめ
激安物件には安い理由があり、その理由が納得できるかどうかが大切です。
また、激安物件というと、月々の家賃の安さに目が行きがちですが、初期費用、退去費用、更新料、短期解約違約金、自分で追加設備を入れる際のコストなど、トータルで考えたときに、月々の家賃が数千円高い他の物件より、高く付いてしまうこともありますので、月々の家賃だけで判断しないようにしましょう。
私が不動産業界にいたころは、激安物件は月々の家賃だけで決めてしまうお客さんも多かったのですが、あとあと入居したことを後悔して、引越しされる方も多かったので、絶対に内見した方がよいです。

引越しするたびに入居時初期費用と、引越し代などのお金がかかるからね。
激安物件には安い理由があるので、原則コスパは相応です。
ですので、コスパを上げようとすると、「賃料交渉」を行うこと、また「引越し時期」を工夫することが重要になります。
「賃料交渉」と「引越し時期」に付いての記事は下記ご参照ください。